ゾムクラブの皆様へ
2024年の個人的学術事件

会長・宮崎興二

2024年も暮れようとしています。某新聞ではすでに本年度の社会的10大ニュースも発表しています。トップはもちろん今年1月1日に起こった能登半島大地震です。
それに対してゾムの社会には何もなく、皆様方への連絡は途絶えています。ただし来年早々には、日野副会長訳の『おもしろ物理ショートストーリー』と私編訳の『SHAPE』が丸善より発売されます。
何もなかった今年ですが、私(84歳)個人についてはちょっとした学術事件がありましたのでご紹介します。

私は今年8月、『4次元の時計』と題する添付のような論文の英語版を北九州で行われた図形科学国際会議で発表しました。A4用紙13枚にわたる大作で、SpringerNature社刊の論文集に掲載されました。それが世に出るや、この半年間に、香港、スイス、メキシコ、フランス、イタリア、ブルガリア、シンガポールなど世界各国のさまざまな学会から10件近くの投稿依頼がありました。
ところがすべてに共通した依頼文が添えられていました。まず『当学会は世界に誇る論文集である。貴殿の4次元の時計に感動したので、それにまつわる解説を世界中の最先端の読者相手に書いて欲しい』と言うので、最初はうれしくなって話に乗ろうと思い、膨大で詳細な投稿規定を読みました。そうすると最後に小さく、『当学会はどこからも補助など受けていないまじめな組織である。したがって多少の投稿料を頂きたい。A4の大きさでできるなら10枚は書いて欲しい。合計40万円である!!』と言うのです。なぜかこのような文面は共通しています。どの国でもA4用紙1枚で3~4万円です。こういう誘いを称してハゲタカジャーナルと言うそうで、世界中に数千の誘い元があるそうです。
庶民生活の間では振り込め詐欺が流行っていますが、研究生活にも同じような詐欺があるものです。お気を付け下さい。